本研究は、羽根車直径が数センチ以下のミニ・ターボ形ポンプの高性能化と実用化を図るための基礎構築を目指し、このようなミニポンプの流体設計指針の妥当性を実験と数値解析の両面から明らかにすることを目的としている。外径35ミリ前後の3種類の遠心羽根車を用いてポンプの性能試験を行ない、本研究者の提案する設計指針の妥当性を検証した。2年間の主な成果は以下の通りである。 1.新設計指針に基づくセミオ-プン羽根車では、60%以上の内部効率が実現された。 2.ミニ化に必須となる羽根車の高負荷化は新設計指針を用いることで達成できた。 3.ミニポンプでも高速化によりレイノルズ数の問題を軽減できるだけでなく、動力損失に占めるメカニカルシール(軸封装置)の機械損失割合を減らし得る。 4.羽根出口角を大きく取ることで揚程-流量曲線が右上がりとなる低流量域での不安定特性が現れるが、その改善法としてポンプ出口の水流の一部を吸込管にバイパスさせる方法の有用性を明らかにした。 5.レイノルズ方程式とk-ω乱流モデルを用いて、ミニポンプ羽根車の1通路内の定常流を数値解析して流体性能を求めた結果はいずれの場合も実験結果と良好に一致した。 6.半開放形羽根車の水力性能に及ぼす軸方向隙間の影響についても、乱流解析により妥当な予測ができることを明らかにした。 7.在来設計の羽根車を用いたミニポンプ性能試験結果から、クローズド羽根車のほうがセミオ-プン羽根車よりもポンプ効率が高いことが分かった。正確な原因については更なる追究が望まれる。 8.ミニポンプ向きの設計指針を採用することによって、セミオ-プン形であっても十分に高い流体性能が実現できる。
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