| 研究概要 |
形状の異なる5種類の供試翼を対象に,低レイノルズ数領域(10^3<Re<10^4)におけるピッチング運動翼まわりの流れ場を染料を用いた可視化法とシュリーレン可視化法により観察し,またそれに働く非定常流体力を小型六輪力覚センサを用いて測定した.その結果,以下のことが明らかになった.
1.静止平板上では再付着現象が発生しないとされている層流はく離でも,高無次元角速度のピッチング運動翼では再付着現象が発生する.また再付着現象は翼形状に依らず,いずれの供試翼の場合でも発生することがわかった.この再付着現象により,はく離は抑えられ,非定常揚力は増加する.また,この挙動は非定常揚力の動的挙動に強く影響することがわかった.
2.低無次元角速度時には,発生する大規模スケールのはく離渦は多数の小規模スケールの離散的はく離渦により形成されている.一方,高無次元角速度時には翼背面に形成される大規模スケールの再循環渦は離散的はく離渦一個もしくは数個が主要となり形成していることがわかった.
3.翼前縁/後縁からの離散的はく離渦発生周波数は無次元角速度に依存しないことがわかった.また,翼前縁/後縁からの離散的はく離渦発生周波数は同数となるため,無次元角速度が高くなるにつれ再循環渦と後縁からの発生渦が干渉しやすくなる.その結果,高無次元角速度時に再循環渦が翼背面から離れると翼腹面からの渦と干渉し翼5弦長後方に渦塊を生成する事がわかった.
4.NACA0020は,ピッチング運動により迎え角増加時に翼前半部分が翼背面に沿った流れとなり,後流が小さくなるため,非定常抗力は定常抗力に比べ減少する.そのため,揚抗比が定常状態時に比べ大きく増加し,翼性能が向上することがわかった.また,翼背面全体を覆うように再循環渦が成長する前縁先端の尖ったBTEは高い非定常揚力を得るために有効であることがわかった.
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