感温液晶シートとステンレス膜ヒーターを積層した試験平板を回転風洞内に設置し、平板前縁に平行な軸周りに回転させ、回転速度と回転方向及び主流流速を変えながら、等熱流束加熱条件のもとで伝熱実験を行った。この系では、コリオリ力が試験平板に垂直に、また遠心浮力が主流方向に作用するが、壁面と主流の温度差が小さいことから後者は無視し、速度場は温度場と独立に決まるという立場で実験を行った。過去に行われた層流境界層に関する同様の実験では、コリオリ力の作用方向に応じて流れの安定性に変化が現れることがわかっており、乱流境界層の熱伝達にも影響が現れるものと予想された。 まず非加熱条件のもとで、熱線流速計を用いて境界層平均速度分布と乱れ強さ分布を測定した。その結果、本実験のパラメータ範囲では、どちらも系の回転によって明確な変化は現れないことが確認された。次に、ヒーターを通電加熱し、感温液晶の色変化を、回転風洞に搭載したデジタルビデオカメラにより撮影した。そして、予め既知の温度場で行われた検定結果を用いて色を壁面温度に換算し、局所熱伝達係数を見積もった。その際、裏面への熱伝導損失を補正するために、合計28本のCC熱電対を壁面に理め込み、試験平板内部の温度場の測定も合わせて行った。その結果、コリオリ力が壁面に向かって作用する回転方向では、回転速度の増加とともに熱伝達係数が増大すること、逆回転の場合には減少すること、この効果は主流流速が小さいほど顕著であることが明らかになった。以上の結果をもとに、加熱面全体の平均ヌセルト数をレイノルズ数と回転パラメータの関数として整理した。 なお、本実験ではトリッピングワイヤを用いて境界層を強制的に遷移させているが、非加熱実験の結果では、加熱開始点付近ではまだ完全な乱流境界層は形成されていなかった。したがって本実験は必ずしも良く整理された環境で行われたとは言えず、今後この点を改善した上で、実験を継続する必要がある。
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