研究概要 |
平成11年度に引き続き、回転平板上の境界層熱伝達について、層流から乱流へ遷移する段階と十分発達した乱流の段階との両方について実験的に検討した。回転風洞中に試験平板を設置し、前縁に平行な軸の周りに一定角速度で風洞を回転させ、等熱流束条件下で熱伝達率を測定した。壁温の測定には温度範囲に応じて感温液晶とCC熱電対を使用し、熱線流速計による流速測定および熱電対トラバースによる流れの温度分布の測定も行った。主流速と風洞回転速度のほか、遠心浮力の影響を調べるために壁面温度も変化させた。 この系では、コリオリ力が壁面に直角に作用するため,回転方向に応じて境界層の安定性が影響を受け,局所熱伝達率が変化する。本年度は特に、前年度の実験で不充分だった乱流熱伝達率の測定および、壁温を変化させて遠心浮力の効果について検討した。実験に先立ち、レイノルズ平均の運動量式とエネルギー式に付随するコリオリ力項ならびに遠心浮力項について吟味し、乱流熱伝達に与える座標系の回転による効果について検討した。得られた主な結論は以下の通りである。 1.コリオリ力が壁面に向かって作用する高圧側境界層では層流から乱流への遷移が促進され、熱伝達率が大幅に向上する。乱流境界層でも熱伝達率は向上する傾向を示すが、変化は層流に比べて小さい。 2.コリオリ力が壁面から外向きに作用する低圧面境界層では、乱流熱伝達が抑制される傾向を示すが、層流熱伝達は全く影響されない。 3.壁面と主流の温度差が増加すると遠心浮力の影響が徐々に現れ、高圧面、低圧面とも乱流熱伝達が促進される。 以上のように、ガスタービン動翼を始めとする回転機器の対流冷却技術の基礎となる知見が得ることができた。
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