研究概要 |
本研究は速度場と圧力場の相関と乱流構造の関係を明らかにするために、実験および数値シミュレーションの双方から相補的なアプローチを試みるものである。昨年度は実験を中心に検討を加えた結果、圧力拡散と乱流拡散の相互作用についての知見を得ることができた。本年度は、主に数値シミュレーションを行い、実験では不十分だった乱流エネルギの輸送方程式の収支について、より詳細な考察を加えた。 数値シミュレーションは、一様流中に置かれた1辺がHの正方形断面を有する角柱の周囲の流れ場を対象とした。計算領域は、実験流路のサイズに合わせ、主流方向に20H、主流と直角かつ角柱断面内の方向に10H、スパン方向に5Hとした。同様の理由から、主流速度とHに基づくレイノルズ数を1,100とした。乱流場に存在し得る最小スケールに相当するコルモゴロフの長さスケールに対して、計算格子サイズを数倍程度となるように考慮し、主流、直角、スパン方向に140×128×24の計算体積を設け、コロケート格子による有限体積法に基づき、オイラーの時間進行法により計算を行った。 以上のシミュレーションの結果を利用して、角柱中央断面の周囲5H×3Hの領域を中心に、乱流エネルギならびにレイノルズ応力の各成分について輸送方程式中の圧力相関項の評価を行った。その結果、変動速度の3重相関から成る乱流拡散輸送と、速度-圧力相関から成る圧力拡散輸送の間の関連は、従来言われていたような比例関係が成り立たない領域が殆どであることがわかった。これは、前年度の実験結果と整合するものであった。さらに、現在のレイノルズ応力方程式モデルで主流として使われている勾配拡散モデルは、いずれもこのような物理現象を表すことができず、速度-圧力相関の項について更なるモデルの検討が急務であることが判明した。
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