研究概要 |
本研究の目的は,液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)製造の一工程である液晶注入プロセスを,数値的に解析できる汎用性の高いソフトウェアの開発である.このソフトウェアが完成すれば,任意の大きさおよび形状のLCDに対して注入時間の大幅な短縮が実現できるので,LCDの生産性は飛躍的に向上し,それがそのままコストダウンに繋がる. まず,低分子液晶の流動に関して実績のあるLeslie-Ericksen理論を構成方程式として選択し,運動方程式と構成方程式にHele-Shaw近似を施して定式化を行った.微分方程式の離散化には有限差分法を用い,従来開発したサブルーチンプログラムを巧みに組み合わせることで,ソフトウェアの効率的開発を図ることができた.一方,液晶は分子の配向状態に依存して3種類の粘性係数を有する.そこで外場により分子を所定の方向に配向させた状態で,二重円筒型粘度計で液晶粘度の精密測定を行った. いくつかの代表的な条件で計算を実施した結果,注入口が一箇所の場合,および二箇所の場合共に,液晶のスムーズな流動・注入が摸擬されており,プログラムの基本部分は完成したと考えられる.注入口の幅,セルギャップ,加圧注入における圧力などの影響を定量化した.また,注入口の幅が同一であれば,注入口が辺の中央に1個設けられているよりも,小さい注入口が2個設けられている方が注入時間は短縮されることが明らかにされた. 次年度は,まず液晶の表面張力を測定する.次に自由表面位置の時間変化を実測し,今年度開発したソフトウェアにフィードバックすることでソフトウェアの信頼性を向上させる.最後にデータの入出力部を洗練する予定である.
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