研究概要 |
本年度の実験の遂行は当初の計画通りに順調に進んだ.氷板の厚さは20mmに統一して,液層厚さは25mmと50mmの2種類の場合について融解実験を行えるように実験装置も2種類の寸法を持つものを作製した.所定の厚さの透明な氷板を矩形水溶液容器底面に置いて,氷板が上面から融解する実験をまず行った.塩化カルシュウム水溶液の初期濃度は20wt%で初期温度は氷板の初期温度と同じく-5℃である.特に融解開始直後から融解面の急激な温度降下を伴いながら氷板は自発的に融解していくが,100秒ほど経過した後は緩慢な温度変化を示した.氷板が下面から融解する場合の融解量は融解時間1800秒で約0.8kg/m^2であり,上面から融解する場合よりもかなり少ない結果となった.これは融解面付近の濃度境界層の厚さに主たる原因があり,これが厚つくなればなるほど融解量も減少するのである.融解ヌセルト数は融解初期では非定常性のため大きな値を持つが融解時間が約30min過ぎると通常の水平流体層のヌセルト数に極めて近い値を示した.合わせて融解液層内の対流可視化観察も行った.数値解析の方は上記融解実験と平行して試みている.液層には連続,運動量,エネルギー,物質移動(質量保存)の各式を適用しする.この数値解析で最も重要な境界条件は融解面における熱および質量バランス(濃度拡散)である.信頼性が高いと言われているSIMPLER法によって繰り返し計算を行って支配方程式の収束解を求める.結果の一部は昨年(平成11年)の日本伝熱シンポジュウム(熊本)で講演した.
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