微小重力環境を利用して新しい材料を創生しようとする試みがなされている。しかしながら、微小重力環境下においては、材料中に気泡が混入していた場合、材料から気泡が離脱しないため生成された材料に悪影響を与えたり劣化を招いたりすることになる。本年度においては、微小重力環境下における液体気泡の制御に超音波による音響定在波利用することを考え、そのための基礎技術の開発を行った。 まず、単一超音波振動子を用いて自由界面を有する液体中に音響定在波を形成し、その中に気泡を注入する実験を行い、液体中の気泡が音響定在波中の特定の位置に保持されることを明らかにした。この実験結果は、Rayleigh-Plessetの式と気泡の並進運動の式を連立して数値的に解くことによって、理論的に確かめることができた。次に、一対の超音波振動子を用いた実験を行った。実験は、気泡を保持した状態で、2つの超音波振動子の位相をシフトさせることによってその間に形成される定在波を移動させた。その結果、一対の超音波振動子間に保持された気泡が、定在波を移動させることによって駆動できることを示した。最後に、以上の地上実験によって得られた結果が、実際の微小重力環境においても実現できるか否かを調べるために、米国NASAジョンソンスペースセンターにある大型航空機KC-135を用いた微小重力実験を行った。その結果、実際の微小重力環境下においても、超音波による気泡駆動技術が使用可能であることを実証するとともに、実際の微小重力環境下においては、地上では留めることのできなかった大気泡や気泡群を制御することが可能であることを示した。
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