研究概要 |
微少重力環境下では、流体内の密度差に起因する浮力が働かない為、対流が起こらず沈殿による分離も発生しない。また、材料自体の重量による形状変形も生じない。このような宇宙環境での特性を利用して均一な合金を製造したり大型の単結晶を製造したりすることが試みられようとしている。しかしながら、材料製造の過程において溶存気体の析出により気泡が発生した場合、発生した気泡は微小重力環境下では物質内に留まることになり,欠陥となって製造される材料の劣化を招くことになる。 本研究のねらいは、強力超音波を用いて、流体中の大気泡の位置や並進運動を非接触で自在に制御することが可能であるか否かを実証するとともに、実用化のために必要となる技術開発を行うことにある。この技術の研究開発によって、微小重力環境での新材料の創生において重要な技術的課題となっている気泡欠陥制御に大きく寄与するだけでなく、本技術を地上における様々な産業分野へ応用する事によって、これまで不可能とされてきた液中大気泡の並進運動の精密制御に飛躍的な貢献をするものと期待される。 平成11年度には、最適化を行って得られた超音波伝送体を用いて,超音波振動子の周波数や出力、位相変化の大きさや速度、気泡の径や形状の影響などを変化させて実験を行い、新しい超音波発生システムに対する,気泡の並進運動特性を明らかにするとともに、これらのパラメータの変化によって音響定在波中の気泡がどのように駆動されるかを明らかにした。計測に当たっては,大気泡界面の動きや周辺での流体の運動を,画像処理技術を用いて計測する.計測は,高速ビデオを用いて撮影した撮影画像を,画像処理して行った。以上の実験から得られた知見に基づいて、実際の機器の設計や製造を行うために必要となる一般的な解析手法や評価手法の開発を行った。具体的には,気泡の位置や運動等を評価するための理論解析手法ならびに気泡変形まで考慮に入れた数値解析手法の開発・評価を行った。これらの解析手法の整備によって、実際の微小重力環境下や質量や粘性あるいは温度条件の異なる環境下における様々な条件での機器の最適設計を行うための基礎データが収集できた。
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