下記の2つの研究を平行して実施した。 (1)近臨界状態にある噴流の不安定性の研究 超臨界雰囲気中に噴射された液体燃料流に対して、線形安定性解析と数値シミュレーション(超臨界流体が持つ超圧縮性の効果を捕捉できるようにTVDスキームを使用)を行い、燃料流の流体力学的な不安定性が気化混合特性に及ぼす効果を調べた。これまで不明であった微粒化機構(乱流噴射液での強い微粒化)の数学的構造を解明する手掛りを得ると共に、超臨界流体の'微粒化'が液体の筋状化の形で起きることが数値シミュレーションによってあきらかになった。また、関連して、連続的に相変化する混合系界面が生み出す力学現象の研究を開始した。 (2)高圧下での液滴の着火特性の研究 凝縮性成分(炭化水素)と非凝縮性成分(酸素、窒素、燃焼ガス)から成る多成分系の物質輸送モデルの構築から出発して、超臨界雰囲気に置かれた燃料液滴の着火特性を数値計算によって調べた。その結果、着火特性を支配する因子として初期の液滴表面の状態が同定できた。所与の初期液滴・雰囲気ガス温度に対して雰囲気圧を増加していくと、初期液滴表面温度が複雑に変化することが、特異な着火後れ時間の圧力依存性を生みだす。この知見は従来の予想を覆すものであり、今後の高圧液滴燃焼研究に及ぼすインパクトは大きいと考える。
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