噴霧燃焼の制御には、微粒化と粒径分布関数の関係を知ることが重要であるが、これまでそれを直接調べた研究はない。乱流微粒化機構を解き明かす上で超臨界雰囲気中に噴射した液体ジェットの利用が有効であることが本年度の研究を通して判明した。すなわち、高圧の窒素ガス中にSF6(臨界温度が常温に近い)液を噴射して微粒化過程を微小重力下で観察し、その結果から空力作用による液体の微粒化に対する新しい知見を導き、生成液滴の分散状態との関連をあきらかにした。空力作用による液体の微粒化はウェーバー数が1程度の値を取る条件で効率的に起きると考えられるが、その過程を実験室の実験で高速度ビデオに収めて見ることは難しい。微小重力環境で近臨界状態の表面を持った噴射液を用いることによって、初めて真の姿を見ることができる。観察した噴射液の表面張力は水の100分の1程度であり、0.1mmの口径のノズルから0.1m/sで噴射したときにウェーバー数が1になる。撮影したビデオ画像の解析によれば、噴射液柱に現れる不安定波の波長は短く、噴射液の直径の2倍程度の波長に成長して液柱の分断が起きている。この波長は、レーリーの不安定性の範囲外にあるため、従来唱えられてきた機構だけでは分断できず、ケルビンの不安定性の発生による渦の生成が短い波長での分断を可能にしていることがわかった。また、作られる液滴の間隔が短いため、液滴は対を作って衝突合体を繰り返し、液滴間隔を広げていく。 他に、スワールの燃焼への影響および噴霧群燃焼発生機構を調べるための液滴列での火炎伝播、およびマランゴニ効果などについても調べた。
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