研究概要 |
管内乱流において壁面粗度が流路途中で急変する場合,まず壁近傍の流れ場に変化が起こり,下流に向かうにつれて変化は壁近傍からコア部へと進む.そして,境界条件の急変後,ある程度の距離を経た後に場全体が新たな境界条件に対応した平衡状態に達する「リラクゼイション(弛緩)過程」が出現する.本研究では,代表的な複雑乱流であり工学的な応用価値も高い矩形断面流路内の乱流において,壁が粗面から滑面へと急変する場合を取り上げ,速度場・応力場の弛緩過程,さらに同流路内の強制対流熱伝達において温度場の弛緩過程を実験的に明らかにし,複雑乱流における運動量輸送と熱輸送のメカニズムとその相似性について検討することを目的とした. 本年度は,まず矩形流路断面(縦横比1.96:1)の両短辺壁が粗面から滑面へ急変する場合を取り上げ,粗度の急変に対する流路内乱流の応答を実験的に明らかにした.粗面流路に対する完全発達乱流の下流に滑面流路を接続し,粗・滑面接合部から約38d_h(d_h:水力直径)までの領域内に7測定断面を設定して平均速度場・乱流応力場の測定を行った.その結果,弛緩過程における二次流れは流路中心部分において比較的長い距離にわたり粗面流路と同程度の強度が維持されること,また速度変動強度は粗面流路の値を一旦オーバーシュートし,その後滑面流路に対する値をアンダーシュートした後に平衡値に達することが明らかとなった.次に,強制対流下における温度場の弛緩過程を明らかにするための第1段階として,正方形流路の対向2面を粗面化した加熱流路において,完全発達状態の平均および変動温度場の測定を行った.その結果.平均温度場と平均速度場の間には非相似性が現れること,その非相似性が乱流熱流束と乱流せん断応力の非相似性に起因することが明らかとなった.
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