研究概要 |
管内乱流において壁面粗度が流路途中で急変する場合,まず壁近傍の流れ場に変化が起こり,下流に向かうにつれて変化は壁近傍から流路中心部へと進展する.そして,境界条件の急変後,ある程度の距離を経た後に場全体が新たな境界条件に対応した平衡状態に達する「リラクゼイション(弛緩)過程」が出現する.本研究では,代表的な複雑乱流であり工学的な応用価値も高い矩形断面流路内の乱流において,壁が流路途中で粗面から滑面へと急変する場合を取り上げ,(1)等温流において速度場・応力場が滑面流路内の完全発達流状態に至るまでの変化過程を実験的に明らかにするとともに,(2)強制対流熱伝達下において温度場の弛緩過程についても測定を行い,複雑乱流における運動量輸送と熱輸送のメカニズムとその相似性について検討することを目的とした. 本年度は,まず強制対流下における温度場の弛緩過程を明らかにするための第1段階として,正方形流路の対向2面を粗面化した加熱流路において,完全発達状態の平均および変動温度場の測定を行った.その結果,平均温度場と平均速度場の間には非相似性が現れること,その非相似性が乱流熱流束と乱流せん断応力の増大率の相違に起因することが明らかとなった.乱流熱流束輸送方程式中の生成項の評価を行い,この非相似性の発現が,温度変動強度と速度変動強度の生成メカニズムの違いに起因することを見出した.次に,この流路の粗面を流路途中で滑面に急変させた状態で,平均温度分布と乱流熱流束の測定を実行し,温度場の弛緩過程について検討した.とくに,乱流熱流束と乱流せん断応力の変化過程の比較から,壁面境界条件の急変後,平衡状態への回復は速度場に比べて温度場の方が早いことが明らかとなった.
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