本研究ではNH4Cl水溶液を用いて、下方から凝固させ、対流挙動や結晶成長について実験的に検討した。この系において発生する対流は濃度差による浮力に基づくもので、最初にフィンガー型対流がマッシー界面上に発生し、その後マッシー界面の移動速度が低下すると局所的に緒晶が界面近傍から再融解し、プルーム型対流が発生する。さらに再融解はマッシー層内部へ進行し、大きなチャンネルを生じる。そのためプルーム対流はチャンネルがマッシー層底部に到達するまで発達し、その後減衰する。 これら2つの対流の速度分布をマイクロスコープを用いた粒子追跡法によって検討した。フィンガー対流は上昇流と下降流からなるが、大きさは等しくなく上昇流が強いことがわかった。その最大速度は0.6mm/sであった。プルーム対流は上昇流の周囲に下降流が存在する2重構造を有し、従来予想されていた速度分布とは大きく異なることが明らかとなった。中心速度の最大値は3.8mm/sであった。 フィンガーからプルーム対流の遷移はマッシー界面で起こり、一部のフィンガーが成長してプルームヘ変化することを感温液晶シートの等温線変化より観察した。
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