本研究では合金の凝固過程において発生するフレックルと呼ばれる偏析現象を模擬するため塩化アンモニウム水溶液を用いて一方向凝固実験を行った。特に、対流に及ぼす初期温度の影響を調査した。実験手法には3色露光法、PIV法、染料トレーサ法を使用した。 *フィンガー対流の挙動と定量化:上昇流と下降流の位置がランダムに移動し、プルームの発生によってフィンガー対流は減衰する。さらにPIV法によって、フィンガー対流の速度場を計測することができた。 *マッシー層内の流れの可視化:マッシー層内の対流は層全体で発生するのではなく、局所的に界面近傍で発生する。そのため、プルーム対流は消失する場合がある。しかし、フィンガー対流が減衰するとマッシー層内の対流は層全体にその勢力範囲を拡大し、プルーム対流は長く保侍される。このような対流挙動はマッシー層の結晶配列の不均一性(または透過率の非等方性)に起因するもとの考えられる。 *初期温度が高いほどフィンガー対流はより長く存在するが、プルーム対流の発生は初期温度の影響をほとんど受けない。また、対流の強度は初期温度が高いほど弱くなる傾向にある。これらの結果はプルーム対流がフィンガー対流を抑制する効果があることを示唆している。しかし、フィンガー対流はプルーム対流を発生させるトリガーの役目は有している。したがって、マッシー層内の対流の発生を決めるレイリー数は一意的には定まらないと思われる。
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