本研究では合金の凝固過程において発生するフレックルと呼ばれる偏析現象を模擬するため塩化アンモニウム水溶液を用いて一方向凝固実験を行った。特に偏析と密接に関係する対流現象をいくつかの可視化法を併用し、詳細に検討した。主要な結論は次のとおりである。 1)フィンガー対流とプルーム対流の関係:フィンガー対流はプルーム対流発生のトリガーとしての役割を演じ、プルーム対流はフィンガー対流と共存する期間で発生と減衰を繰り返す。フィンガー対流が消失するとプルーム対流は長く持続し、マッシー層内にチャンネルが冷却面に向かって成長する。また、共存期間は初期温度が増加するほど長くなることを見いだした。 2)液層部の対流評価:PTVやPIVによる速度計測法を用い、フィンガー対流およびプルーム対流の速度を計測した。特にプルーム対流では上昇流と下降流とが共存する2重構造を有することを見いだした。 3)マッシー層部の対流評価:界面近傍の流体を染料で着色し、マッシー層内への染料線の浸透速度を測定し、00.1mm/sの値を得た。この結果はプルーム速度から流体の連続性を考慮して推算した値に近く、計測の妥当性を確認した。 4)プルーム対流の発生:プルーム対流発生の位置は一意的に定まらず不安定である。これはマッシー層内の構造、すなわち対流が結晶形態と密接に関連しているためである。
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