本研究は、流下液膜の三次元表面波が、一様流れ中の平板上の速度境界層の乱流遷移域において観察される馬蹄形渦と類似していることに注目し、液膜の二次元表面波から三次元の馬蹄形表面波(渦)に発達する過程の運動特性を調べ、速度境界層に発達する渦に共通する特性を明らかにすることを目的とする。 2年目の2000年度は、端効果のない表面波の実現のため、鉛直円管内を流下する液膜を形成するための実験装置を製作し、表面波の運動特性と表面波によるガス吸収特性を明らかにした。レイノルズ数Reが約40以下(Re<40)では、円周長さ30mmの円管内においては、二次元表面波から馬蹄形表面波(渦)への完全な発達は生じなかった。それに伴い、Re<40では、ガス吸収のシャーウッド数Shは、レイノルズ数Reの1乗に比例して急増した。40<Re<400では、二次元表面波は、馬蹄形表面波に遷移した。また、隣り合う馬蹄形表面波の接合部が∧形に折れ、そのシャープな接合部から表面波の分裂が生じた。Reの増加とともに、馬蹄形表面波への遷移は急速になり、かつ表面波の分裂は著しかった。この表面波の運動に伴い、40<Re<400では、シャーウッド数Shはレイノルズ数Reの約0.5乗に比例して増加した。 400<Re<900では、層流から乱流への遷移が生じ、初めから分裂した表面波が発達する。この遷移域では、レイノルズ数Reの増加に伴い、分裂表面波の発生位置が急速に上流に移動した。また、それとともにシャーウッド数Shは急激な上昇を示した。
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