研究概要 |
本年度は,ハイブリッド型人工臓器のようなシステム化された組織を模すため,ヒト皮膚繊維芽細胞をコラーゲンスポンジ中で3次元培養することにより,任意形状と細胞密度で人工組織化したものを凍結保存し解凍後の生存率を評価した.そして,この人工組織において,細胞密度による凍結過程の違いを熱量分析により調べた. 皮膚繊維芽細胞はコラーゲンスポンジ中(高研CELLGENΦ20×1mm)で3次元培養され,細胞密度10^4〜10^7cells/cm^3で人工組織化された.凍結保護物質には10%DMSOを用いた.人工組織を4枚積層し試料室(Φ24×4mm)に入れた.試料室は,液体窒素槽中に設置された銅ブロックと,試料室の冷却部(アルミ板,厚さ1mm)を密着させることで冷却された.温度は試料室のC-C熱電対(線径0.1mm)で測定された.冷却速度は,直流電源で駆動されるカーボン薄膜ヒーター(厚さ0.1mm)と温度調節計(CHINO KP1000)により,1,10,50℃/minに制御された(4〜-196℃).試料は,-196℃において2時間保持後、銅ブロック(37℃)に試料室を圧着し約250℃/minで解凍された.解凍後の生存率はトリパンブルー染色により測定された.それと並行して.示差式熱量分析装置(Perkin Elmer Pyris 1)を用い,冷却速度1,10,50℃/min,温度範囲20〜-165℃において人工組織の凍結・解凍過程における潜熱を測定した. その結果,凍結・解凍実験においては,細胞密度の増加に伴い解凍後の細胞生存率が低くなった.そして,冷却速度1℃/minのときの解凍後細胞生存率が比較的高く,冷却速度が大きくなるにつれ解凍後の細胞生存率は低くなった.熱量分析においては,細胞密度の増加に伴い潜熱が増加する傾向となった.このことは細胞内凍結の増加を示していると考えられる.
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