研究概要 |
本年度は,ハイブリッド型人工臓器を模すため,第一に,マイクロカプセル化細胞を作製し,その凍結・解凍過程観察と凍結過程における潜熱放出量測定を行い,解凍後生存率を懸濁細胞と比較することにより細胞の凍結保存に対するマイクロカプセル化の有効性を検証した.そして第二に,ヒト皮膚繊維芽細胞をコラーゲンスポンジ中で3次元培養することで,任意の細胞密度で人工組織化したものを凍結保存し解凍後の生存率を評価した. 第一の実験においては,PC12細胞を実験試料として用い,アルギン酸・ポリ-L-リシンをマイクロカプセル膜として使用した(平均直径452±24mm,平均細胞数662±27cells).PC12細胞懸濁液,又は,マイクロカプセル化PC12細胞が[別に顕微鏡観察されると共に]10%DMSOと共に容器(20ml)に封入され,示差走査型熱量計(Perkin Elmer Pyris 1)により冷却速度0.5〜10℃/minで室温から-80℃まで冷却され,凍結過程における-20℃までの潜熱が計算された.解凍後の細胞生存率がドーパミン放出量により測定された.その結果,低冷却速度では,凍結過程の初期段階でマイクロカプセル内が未凍結状態となり,細胞懸濁液と比較して高い生存率が得られた. 第二の実験においては,皮膚繊維芽細胞はコラーゲンスポンジ中(高研CELLGEN,φ20×1mm)で3次元培養され,細胞密度10^5〜10^7cells/cm^3で人工組織化された.凍結保護物質には10%ジメチルスルホキシドが用いられた.試料は,冷却装置により0.3〜50℃/minの条件で凍結され,-196℃で2時間維持後,解凍されて細胞生存率がトリパンブルー染色法により測定された.その結果,細胞密度の増加に伴い解凍後の細胞生存率が低くなり,しかも,最適な冷却速度は細胞密度の増加に伴い低冷却速度側にシフトする傾向となった.
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