本年度は、廃液の分離効率に影響を与える因子の解明に重点をおいて研究を行った。廃液のモデルとして、10vol%のエチレングリコール水溶液1000mlを使用した。実験装置は内容積1200mlの直方体容器であり、その4つの側面が銅製の伝熱面となっている。その外側にブラインを循環させ、各面独立に冷却している.実験のパラメータは攪拌翼形状、攪拌の回転数、ブライン温度及び分離機構の4つとし、それらが氷の形状および濃縮液・希薄液濃度に与える影響を検討した。なお、氷間への溶質の取り込みと伝熱面への氷結を防ぐ作用が期待される添加剤(有機ケイ素系化合物)は銅の伝熱面と化学反応することが実験の結果判明したために、本年度は添加剤の効果の検討は行なわなかった。実験の結果、攪拌によって溶液中の温度分布を一様にすることができたが、攪拌翼形状は氷の形状および各濃度に殆ど影響しないことがわかった。一方、攪拌の回転数によって生成氷の形状を制御することができた。即ち、150〜300rpm程度の攪拌により伝熱面に付着することのない粒状氷を生成できた。その粒状氷は針状・板状氷に比べて氷間に溶質の取り込みが起こり難くいという有利な点がある。また、この場合、伝熱面への氷結がないので熱抵抗が減少して、より多くの氷が得られた。次にブライン温度については、-6℃程度と高めの温度に設定し、溶液の凝固点(-3.5℃)付近で徐々に凍結させることで得られた氷を融解させると、最終的に.5vol%程度の濃度の溶質を含んだ希薄液が得られた。しかし、ブライン温度を-10℃として冷却速度を大きくすると、単位時間あたりの氷の生成体積は増えるという利点がある一方で、氷間への溶質の取り込みが多くなり、希薄液の濃度は5vol%程度に上昇した。また、濃縮液と氷の分離機構に関しては、先細形状の分離装置で分離した結果、希薄液濃度の低下が見られた。
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