本年度は、廃液分離効率の一段の向上を目的として装置の作製を行った。昨年度使用していた直方型凍結容器での問題点であった容器角部での氷晶の滞留とそれによる熱伝達率低下を解決するため、新たに円筒と逆円錐を組み合わせた形状の凍結容器を作製した。円筒型凍結容器は内径95.4mm、円筒部高さ144mm、内容積1190mlである。凍結容器は二重の円管構造となっており、内側には熱伝導性の良い銅管、外側には断熱を考慮したアクリル管を採用した。銅管を伝熱面としてその内側で廃液を冷却し、銅管とアクリル管の間をブラインが循環する構造となっている。廃液には、昨年度同様10vol%のエチレングリコール水溶液1000mlを使用した。 直方型容器では濃縮液の分離を完全にするために、氷晶をテーパー付きの容器に移し替える2次分離工程が必要であったが、円筒型容器ではその工程を削除することができた。最終溶液温度と分離時間を同一にして実験を行った結果、希薄液濃度を5.7vol%から2.5vol%に低減させることができ、さらに直方型容器で撹拌中に発生していた容器角部での氷晶の滞留を解消することができた。同時に、容器内の水溶液の流れもスムーズになり熱伝達率の低下も解消できた。 また、本年度は特に冷却速度が希薄液濃度に及ぼす影響について検討した。昨年度の結果から、撹拌あり、氷核投入あり、という条件で実験を行った。その結果、冷却速度が遅いほど希薄液濃度が低くなることが確認された。これは、冷却速度が遅いほど氷晶の直径が大きくなる傾向にあり、氷晶直径や氷晶間の空隙率などが濃縮液の分離に影響を与えているものと思われる。さらに、単位時間あたりの氷(希薄液)の生成量を増加させるため、冷却の途中で熱抵抗となる氷晶を取り除き、濃縮液のみを再び冷却する方法で実験を行った結果、希薄液体積の増加したが、希薄液濃度は上昇してしまうことが確認された。
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