研究概要 |
本研究では永久磁石を用いないゼロパワー方式の磁気軸受の実現をめざす。すわなち、電磁石のみ用い、かつ、バイアス電流を全く用いない制御電流のみの磁気軸受システムを実現する。具体的には、電磁石の電流と吸引力およびギャップと吸引力の強い非線形性は、厳密な線形化による非線形制御によって完全なる線形化を図り、向かい合う電磁石を1対とする制御方式をとらず、これらを各々独立に制御する方式を採用する。その場合、2つの制御方式が考えられる。1つは、向かい合う1つの電磁石に制御電流が流れ吸引力を発生する時は、相対するもう一方の電磁石側は電流をオフとして吸引力を発生しない。すなわち、向かい合う1対の電磁石はオン(吸引力発生)とオフ(吸引力無い)を交互に繰り返して安定浮上させるという方式である。もう1つの方式は、制御対象が広大域で厳密に線形化されているので、状態空間モデルは良く知られた線形のモデルとなっている。ここで、制御入力は2入力と考える。このように考えることで一般の多変数制御系となり、安定なレギュレータ問題またはサーボ問題に帰着して設計しようとするものである。第2番目の場合は向かい合う電磁石への電流はオン・オフ型とならず、両方に異なる電流が流れ吸引しあう場合も有る。これらの2つの考え方に基づいて制御系設計を行うが、特に本研究では線形ロバスト制御系設計と非線形ロバスト制御系設計を行う。とりわけ、マッチング条件の成立する制御対象であることを意識して、積極的にロバスト性能を引きだせるスライディングモード制御を適用する。また、この方式によって制御エネルギーのきわめて少ないゼロパワー方式の磁気軸受を実現する。このような観点からの研究は国内はもちろん海外も含めて全く無く、著者の独創的視点によるものである。 本研究が提案する全く新しい方式のゼロパワー磁気軸受は以下の点で画期的であり独創的である。すなわち、厳密な線形化法とスライディングモード制御という共に代表的な非線形制御理論を巧妙に組み合わせることにより電磁石のみによるゼロパワー磁気軸受を実現していることである。このようなコンセプトによる省電力型磁気軸受は今後この分野に大きなインパクトを与えると思われ、本研究の成果は当該産業分野に大きな貢献をするものと確信する。その長所を具体的に列記すると、まず、(1)バイアス電流が不要なため、小さなパワーアンプで十分である。(2)パワーアンプの飽和が格段に回避できる。(3)永久磁石が不要であるため、渦電流損失を微小に抑えられ回転効率が上がる。(4)電磁石のみであるため実装と制御が容易である。(5)大域的に線形化を行っているため、制御特性の信頼性の高上につながる。(6)全体として大幅なコスト削減につながる。 これまでの基礎的な研究で,目標を達成し磁気軸受実機を用いた実証テストにおいて有効性を明らかにした.この成果は画期的であり,関連分野への波及効果は計り知れないと思われる.
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