研究概要 |
初年度は2次元の音響空間を想定して,単周波の連続音源に対する音源探査の可能性を計算機シミュレーションにより示した。本年度も引き続き2次元の音響空間を取り扱ったが,より現実的な場合を想定して,音源が複数ある場合や複数の周波数成分を有する音源に対する音源探査の可能性を検討した。前年度と同様"観測データ"はTLM法による順伝搬計算の結果を用い,逆伝搬解析プログラムへの入力とした。2,3の数値実験の結果 1.複数の音源があっても探査可能である 2.複数の周波数成分を有する音源の場合でも,周波数解析が可能であれば探査を行える 3.複数の音源で音源位置が重なっていても周波数が異なっていれば探査可能である 4.放射されている音波が単一波であっても音源面が既知であれば探査可能である 等が明らかになった。また,各場合ともノイズが重畳している環境下であっても,40dB程度のS/Nが確保できていれば,良好に音源分布を推定できることが分かった。さらに,現実的な問題に対応できるように3次元音響空間を扱えるシミュレータを開発し,点音源など簡単な場合について基本的な性能評価を実施している。 プログラムの開発と並行して,音源探査システムを試作した。本システムは限られた音響空間で実験を行いやすくするために,水中超音波を用いている。パルス波を送波器から放射し,リニアアクチュエータにより移動可能な受波器を用いて複数地点の観測波形を取得できるようにしてある。周波数180kHzの円形ピストン音源によって形成される音響空間に本手法を適用したところ,音源位置がほぼ確認でき,本手法による音源探査の可能性が示された。
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