研究概要 |
振動を抑制するには粘性ダンパーによって運動エネルギーを消費して減衰効果を得るのが普通であるが,ポテンシャルエネルギーを消費して減衰効果を得ることも当然考えられる.構造系の振動では,後者のタイプのダンパーは実現困難であるが,流体系の振動では,流体自身が任意に変化し,移動しうるので,ポテンシャルエネルギー消費型ダンパーが実現可能であると考えられる.本研究では長方形容器内のスロッシングを対象として,液面の高まりによるポテンシャルエネルギーの一部を運動エネルギーに変換しない方式を用いて,ポテンシャルエネルギー消費型ダンパーの特性及び実用性について研究するものである.平成11年度の研究実績の概要は次のとおりである. 1.ポテンシャルエネルギー消費型ダンパーに関する研究の第一歩として,長方形容器のスロッシングを対象として,主系となるスロッシングの基礎式と副室における液面振動との連成振動の数学モデルを定式化した. 2.副室の減衰効果を数値シミュレーションによって検証した.計算のパラメータとして,副室の大きさ,逆止弁部の面積,下部放出孔の大きさ(流動抵抗)などを変化させて,系統的な計算を行った.その結果,設定して副室と逆止弁によってポテンシャルエネルギー消費型のスロッシングダンパーが形成されることがわかった.さらに,設定した副室の大きさに対して最大の減衰効果を与える下部放出孔の大きさが存在することが確認された.これより,ポテンシャルエネルギー消費型スロッシングダンパーの特性が把握され,実用化のための基礎データが得られた.
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