腹腔鏡下手術では、腹壁に小さな穴が開け、2〜3本の処置用の鉗子、および腹腔鏡を挿入する。小さな穴であるため、低侵襲であり、患者への負担が少ない。しかし、逆に医者には高い技能が要求される。本研究は、医者への負担の軽減のため、手術鉗子類を体外で操作するロボットとそれを遠隔操縦するマニピュレータによる手術システムの問題点を扱う。 現在、da Vinciシステムが提案されている。しかし、未だに、鉗子先端力の力帰還が出来ていない。また、糸・針縫合における糸の結節操作が煩雑なままとなっている。さらに、鉗子を操作するロボットの形式と作業性についての検討が不充分である。具体的には、遠隔地にいる術者をロボット手術システムが支援する場合のような協調作業性などについての検討も不充分である。 本研究は、糸針による縫合作業に注目して、ロボット・システムの問題点を解決する二三の提案と試作、試行を行った。 本研究で得られた成果は次ぎの通りである。 (1)持針鉗子の顎がシャフト固定のままで回転できる6自由度運動可能な鉗子を提案・試作した。 (2)腹穴からの外力外乱の問題を、本研究で提案の外套法により解決して、鉗子先端力を測定し、この力を操縦桿に帰還させることに成功した。 (3)本研究者は以前に、糸の結節操作を省略できる糸融接法を提案していたが、この方法による多機能鉗子を試作し、糸融接のロボット化を可能にした。 (4)鉗子類を躰腔外で操作するロボットの機構として、球面リンク型機構を提案し、従来の平行リンク形式と比べこの型式のロボット機構の剛性が高いことを示した。 (5)術者を支援するためには同じベッド上でロボットが協調作業をする必要があるが、従来の型式のロボットと比べ、変形スカラ型式はベッド上で作業するのに必要な動作空間が小さく、共同作業に適していることなどを示した。
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