研究概要 |
本年度は,触力覚提示方式における触力覚表現情報データ構造の検討・構築を行い,併せて試作したハプティクスディスプレイを用いての接触時振動の提示実験と表面状態提示実験を行った.触力覚表現情報データ構造として,表面情報,局所粘弾性情報,熱伝達情報,幾何情報に分類し,そのデータ構造を構築した.表面情報は物体表面の凹凸情報を表す.局所粘弾性情報は粘弾性係数及び接触時振動に提示に関する情報を表す.熱伝達情報は対象物接触時における熱移動による温度変化に提示に関する情報を表す.幾何情報は対象物の寸法等形状を表す情報である.これらの情報はマッピングデータとモデリングデータの2つの特性に分類し管理されている.提示実験としては,昨年度に続き対象物への接触時振動感覚提示実験を行った.ハプティクスディスプレイを保持し,レバーのような棒で対象物に接触させた場合の,接触振動を指先に提示した.対象物としては,木と金属を仮定し実験を行ったところ,両者の明確な相違を表現できた.表面状態提示実験は,仮想物体表面に触れ触運動を行ったときに生じる感覚を提示するものである.本実験では,表面状態データとしてデジタルカメラで撮影した画像を触力覚情報に変換し,提示情報とした.対象物表面の凹凸情報の検出のため被写体に当てる光源を変え撮影を行っている.表面情報としては画像の1pixelを0.2mmとした.これらのパターンデータは離散データであるため,その間はスプライン補間処理を行っている.被験者提示実験では,煉瓦,コンクリート,御影石等5種類の対象物表面パターンを用いた.提示された対象物と実物のレプリカに触れた場合の判別実験では,コンフュージョン行列を作成し判別率を検討した.結果として,まだ不十分なところも多々あるが良好な結果を得ることができた.この他,本年度は温熱感覚の付与機構の基本構造の試作を行い予備実験を行った.発熱・吸熱素子としてペルチェ素子を用い,印可電力と放熱特性の基本実験と印可電圧のPWM制御による熱伝導制御の予備実験を行い,ある程度の熱伝導制御可能範囲データを得ることができた.
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