研究概要 |
リー代数に基づく,剛体の多体システムとしての運動解析および動特性解析のための統一理論の研究を行った.開ループ機構,閉ループ機構の両者に対して適用可能な解析アルゴリズムの開発を行い,そのための計算機プログラムの処理の高速化を目的としたアルゴリズムの改良を行った.機構の統一的運動解析プログラム実現のため,開ループ機構の解析プログラムに,開ループの先端を接続することにより閉ループ機構の解析プログラムに発展させるアルゴリズムを開発し,このアルゴリズムに則り,従来は手を付けられていなかった慣性行列の漸化式に基づく計算アルゴリズムを開発し,慣性行列を陽関数の形で導くことを可能とした,さらに閉ループ機構への展開のため,ループ毎にその速度,加速度,力のベクトル表現を,ループ内の受動対偶で基底を構成することにより,簡潔な表現で,処理工数の少ない,機構の種類に関わらず適用可能な新しい解析手法を導いた.本手法はループの拘束条件を従来広く行われていたラグランジュの未定乗数を用いて表す手法にかわり,拘束条件を満たす形で,式展開を可能とするものである.またループ毎に計算のための基底を作ることにより,従来はあまり取り扱われていなかった,ループ毎にその運動空間の異なる機構に対しても,通常の機構と全く同じ処理で解析が可能となった.また本アルゴリズムにより,同じリンク数の開ループ機構に対し,それより少ない時間で閉ループ機構の動解析が可能となる見通しを得た.さらに本アルゴリズムは通常の機構だけではなく,宇宙空間内を浮遊する剛体の多体システムの解析にもそのまま適用できる汎用性を確認した.本研究により剛体多体システム解析のための新しいアルゴリズムが確立したことで,この成果を運動シミュレータの構築に発展させたい.
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