研究概要 |
平成12年度では次のような成果を得た。 1.これまでの異常歩行モデルを発展させて,脊髄損傷者等の両下肢関節弛緩性麻痺を想定可能なモデル化を昨年に引き続き試みた。これを用いて擬似Walk-aboutによる装具歩行(杖有り,杖無し)のシミュレーションを行った。 2.長期臥床者,高齢者,宇宙長期滞在者,運動選手などにとって筋力の維持・増強はQOL向上,記録向上に欠かせない。昨年,考案した電気刺激による筋力増強法の原理に基づき長期実験(12週間,週3回刺激)を行った。被験者(健常男性12名,全員右利き)の上腕二頭筋・三頭筋を刺激(6名ずつ左右逆)した結果,1)従来の一定肢位に維持する方法と2)考案した方法では,12週後,それぞれの筋断面(MRIにて撮像)において1)3.8%と2)15.4%,1)7.4%と2)17.4%という差がみられ,2)の優位性が明確となった。ただし,皮膚上に貼付した表面電極をバイポーラ電圧制御方式(基本周波数5KHz)で刺激し,方法2)では屈曲と伸展運動(各2秒を10回行い1分休憩,これを10回繰り返す実験)を伴うが,1)では刺激時間は同じであるが腕を静止状態に保っている.今後,下肢について同様の研究(3月末に委託業者が完成予定の新型刺激装置を使用)を行い,最終的に「運動機能の維持・強化のための運動療法の評価法とシステムの開発」に結びつける考えである。 3.脳卒中患者の歩行機能再建を目指し,相反性歩行装具(RGO)と機能的電気刺激(FES)の効果を検討する。今回は,脳卒中患者にみられる遊脚時での下肢外転運動を伴う歩行(通称,ぶん回し歩行)に対するRGOの効果を三次元運動計測システムで調べた。この結果,健脚の患脚牽引(数kg)によって患側の遊脚へのスムーズな運動が誘発され,ぶん回し歩行の軽減が確認された。
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