研究概要 |
1.異常歩行時の補償動作について知見を得るため,歩行運動の計測を行った。骨盤骨切り術後と筋ジストロの患者の歩行特性を比較した。骨切り術後の患者の歩行では,その手術技法によって受動的な張力の発生が困難となり,側腹筋の作用によって骨盤を支持脚側に持ち上げ体幹とともに支持脚側に傾けていると考えられた。一方,筋ジストロ症では全身の筋力低下はみられるが,歩行が可能な程度であれば骨盤の支持(能動的あるいは受動的)が可能で骨盤の遊脚側が下がり,体幹は支持脚側に傾くと考えられた。前者がDucheme gait,後者がTrende lenburg gaitに相当する跛行と考えられた。 2.長期の臥床者や宇宙滞在者,高齢者,運動選手などにとって筋力の維持・増強はQOL向上,記録向上に欠かせない。我々が考案した電気刺激による筋力増強法の原理に基づき、上腕への長期実験(12週間,週3回刺激)を昨年行い、その方法の優位性を示した。今年は下肢への長期刺激実験(6週間,週3回,被験者14名,電気刺激群7名,運動群7名)を行った。大腿四頭筋,ハムストリングへの拮抗筋電気刺激群(伸展2秒,屈曲2秒を最大耐用電圧で連続10回。この運動を10セット行い,セット間1分の休憩)と運動群(最大筋力30〜40%の重錘による負荷。他の実験条件は同じ)の各筋力増強率は前者28%,後者は15%となり,MRIによる筋断面計測でも前者に有意な増加を確認した。 3.相反性歩行装具(RGO)と機能的電気刺激(FES)による脳卒中患者の歩行機能再建を目指した。患者歩行における作用点の鉛直軸回りのモーメントが健常人とは逆の特性となっており,1周期全体でその動作を考慮する必要があると推察された。一方で異常歩行時の上体の補償運動に着目し,相反性歩行装具(RGO)によって,昨年のぶん回し歩行の軽減の確認に続き,上体の揺動が減少することを確認した。
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