研究概要 |
平成11年度においては,楔形ギャップ付き直交磁心可変インダクタの動作機構の解明を行うとともに,1kVA程度の線形可変インダクタの試作を行った。 直交磁心は磁気特性の非線形性を利用した磁気デバイスであり,さらに,強い磁束分布を有する。このため,通常の磁気デバイス解析手法の適用は困難である。著者は,直交磁心をいくつかの要素に分割し,それぞれの要素を3次元的な非線形磁気抵抗で表す,いわゆるReluctance Network Analysisを考案した。ギャップ付直交磁心の解析に適用したところ,高い精度の特性計算が可能であることが明らかになった。これは最適ギャップ形状などの設計に対しても有用である。 上記の成果に基づいて,1kVA程度の直交磁心形三相可変インダクタンスを製作し,制御特性や制御時の出力電流高調波を測定し,本研究で提案した可変インダクタが本質的に低歪み出力を有し,制御性も具備していることを実証した。さらに,直流側巻線の結線法によっては,出力電流高調波が発生することを指摘し,発生のメカニズムとその対策などを明らかにした。これらの成果は電気学会,応用磁気学会の研究会等で発表すると伴に,本年4月トロントで開催される国際磁気学会において報告する予定である。 以上より,直交磁心型線形可変インダクタを用いた直列補償方式の電圧調整器の設計・製作に必要な事項が明らかになり所期の成果が得られたものと考えている。次年度においては,本年度の成果をもとに直列補償器を試作し,実用化に必要な事項を明らかにする予定である。
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