研究概要 |
平成12年度は,前年度に得られた知見に基づき,直列方式高速電圧調整器の実現に必要な事項を明らかにするとともに,簡単な模擬システムにより実験を行った。 直交磁心に楔形ギャップを施すことにより,可変インダクタとして動作させたときの出力電流高調波が著しく低減される。しかし原理的に第3調波電流はある程度残留する。可変インダクタを3相の電力系統に並列に接続する場合には,可変インダクタの二次側をデルタ結線すればよい。しかし,直列に挿入する場合にはこの方法が適用できない。本研究では,直交磁心の二次側には主巻線のほかに制御回路用電源のための巻線が施されていることに着目し,この巻線をデルタ結線して第3調波電流を還流させることにより,主巻線電流の第3調波成分の低減を試みた。簡単な仮定に基づく解析と実験を行い,本方式により実用上十分なレベルまで主巻線電流の高調波成分が低減されることを実証した。以上より,電力品質の極めて良好な直列方式電圧調整器が実現可能であることが明らかになった。 本研究ではさらに,直列方式電圧調整器の新たな応用についても検討を行った。すなわち,系統のインピーダンスを調整すれば電力の流れを制御できることに着目し,直交磁心形可変インダクタと電力用コンデンサを並列に接続し,これを電力系統に直列に挿入する直列補償方式の潮流制御器を試作した。解析ならびに実験により本装置の動作を確認している。本装置は,直交磁心形可変インダクタを調整するというきわめて簡単な手段により,交流系統を流れる電力の大きさと方向を任意に制御できるため,フレキシブルな潮流制御が可能になる。さらに,直交磁心と複数の変圧器を組み合わせて潮流制御を行う,移相器への応用についても検討を行い,その基本的な回路構成について明らかにした。以上より,本研究の目的はある程度達成されたものと考えている。
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