研究概要 |
変換効率が高く,環境性に優れた固体高分子燃料電池(PEFC)が電気自動車用や家庭用分散電源として期待されている。固体高分子膜は湿潤度や温度によってイオン導電度や電気浸透係数などが大きく変わるので,PEFC中の水分挙動や温度分布を正確に把握し,セル全体で一様に発電するよう湿潤度や温度を管理することが重要である。またPEFCを電気自動車などの負荷変動に応じて効率良く発電させるためには,負荷や活物質流量が変動した時の電池応答特性を明らかにしておくことも重要である。 そこで本研究ではまずPEFCの定常発電特性を解析するため,質量・電荷・エネルギー保存と膜物性変化を考慮した解析コードを開発し,セル温度,活物質の加湿温度や利用率,電流密度などの運転条件を変えて,発電特性を解析した。ただし,反応過電圧は発電時の実測電圧-電流特性に合うよう定めた。その結果燃料や酸化剤の加湿温度により膜の湿潤度が変わり,電流分布が多様に変化することが分かった。これらを確認するため,分割電極セルで電流分布を測定し,膜・電極接合体の接触抵抗に多少のばらつきはあるものの,解析値に合う電流分布を計測することができた。また,膜の水蒸気に対する拡散係数と電気浸透係数も実測した。 更に,PEFCの負荷電流と活物質量を急変させてセル電圧の応答を実測・解析したところ,一定の水素/酸素流量を流した状態で早い負荷電流変化に対しては,応答時間は電気二重層と反応抵抗で決まる時定数となり,一定の改質ガス/空気流量では拡散効果が大きくなり,応答時間は遅くなることが分かった。負荷電流を一定にして燃料や酸化剤の流量を数秒で変えた実験ではセル電圧は余り変化せず,数十秒の遅れで膜の湿潤状態が変化し,セル電圧も変わることが判明した。
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