研究概要 |
がいしおよび送配電線の設計に役立てるために,汚損がいし表面に発生する局部放電の進展モデルを構築することを目的として,筆者らは,汚損がいし表面を模擬した電解質水溶液面における局部放電の進展特性,進展条件,進展機構の解明などを行ってきた。電解質水溶液面の局部放電はその先端付近の気中部分の電気的破壊によって進展するといわれている。したがって,局部放電先端付近における,電子による衝突電離現象を定量的に検討するためには,その先端付近の電界分布を知ることが必要である。そこで本研究では,電極間を流れる放電電流(局部放電を通って電解質水溶液面へ流れる電流)と局部放電先端部分から電解質水溶液面へ流れる電流との関係,すなわち局部放電と電解質水溶液面との接触状態について検討した。電解質水溶液を入れたベークライト製の箱に針電極と平板電極を配置した電極系によって,汚損がいし表面(汚損湿潤面)を模擬した。この箱の底面には,1cmの間隔で19本の直径1mmのタングステン棒製のプローブ(タングステンプローブ)を取り付けた。印加電圧としては,2/80μs,10/800μsおよび100/2500μsのインパルス電圧が使用された。針電極と平板電極との間にインパルス電圧を印加し,局部放電を電解質水溶液面に進展させ,タングラステンプローブにより底面の電位分布を各種の実験条件の下で測定した。その結果,局部放電の進展距離にかかわらず,電極間電流の大部分が局部放電先端部分から溶液面に流入し,針電極と局部放電先端部分との間の局部放電幹部分から溶液面へ流れる電流は少ないこと,および印加電圧波高値,印加電圧波形および電解質水溶液の抵抗率は,局部放電から溶液面への電流の流入状態にほとんど影響しないことが分かった。
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