研究概要 |
永久磁石を回転子内部に埋め込んだ埋込磁石構造同期電動機(IPMSM)はマグネットトルクの他に磁気的な突極性に基づくリラクタンストルクも利用できるため、従来の表面磁石構造同期電動機(SPMSM)と比べて定格運転では極めて効率が高い。しかし、軽負荷高速領域では大きな負のd軸電流を原理的に必要とし、この運転領域で効率が低下するため、このような用途では改善が望まれている。 従来のIPMSMの構造では、低速領域で大トルク、高速軽負荷領域で高効率を実現することは、原理的に難しい。平成11年度は永久磁石の磁束をロータの磁束障壁内に挿入した可動鉄片で短絡する構造によりこの問題点の解決を目指し、一応の成果を得たが、汎用にするには製作上の問題があった。平成12年度はロータの両側から軸方向磁束短絡可動円板を接近させ、速度に応じて電機子鎖交磁束を自由にコントロールできる構造を提案し、検討した。本年度は引き続きこの構造によるIPMSMの性能改善効果をさらに確かめ、検討を行った。その結果、次の成果を得た。 (1)可動円板とロータとの距離をコントロールすることにより、永久磁石の電機子鎖交磁束を調整することができる。 (2)モータおよび可動円板の寸法が磁束低減効果に影響するため、適当な設計が必要である。 (3)提案IPMSMは非常に広い範囲で定出力運転ができることを明らかにした。可動円板の速度による移動パターンを適度にコントロールすれば,低速時の大トルク特性と高速時の広範囲定出力運転能力を持たせることが可能であることが明らかとなった。 (4)永久磁石の電機子鎖交磁束が直接低減できるため,d軸電機子電流による損失が小さくなり,効率が改善される。特に高速,軽負荷時の効率の大幅な改善が実現できる。 (5)可動円板が'離れる'、'接近する'という簡素化したパターンでも十分な効果が得られ、実用的であることが明らかとなった。 これらの結果は研究成果として7編の論文に報告している。
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