本研究は、大規模系統における階層化構造の確立を目指し、系統運用と運用計画の様々な課題について、適用されるべき手法を明らかにし、幾つかの問題に対して階層化アルゴリズムの実用化を目指すものである。 初めに、系統の瞬時運用の典型的な例である、発電機の最適負荷配分問題、特に熱併給分散型電源を含む系統運用決定手法に検討を加え、実データに基づく特性把握を行った。その結果、熱価絡についての指針を得ることができたが、更には各種の制約条件を組み込むため、最適潮流計算のアルゴリズムの開発に着手している。なお、多種多用な分散型電源が系統に導入された際、大型集中電源とどのような協調運用が望ましいかについても、負荷配分手法と時間的な協調を図る階層化構造の観点から詳細な検討を加えている。 発電機の起動停止計画問題に関しては、まず、年間計画で燃料使用量に制約が存在する場合の、与えられた補修計画の下で実運用に耐えるアルゴリズムを開発し、更には、長期、短期を問わず適用可能な高速化手法の確立を目指している。基本的な試算では、計算負担を大幅に軽減できることが明らかになっている。 最後に時間分割に基づく短期、中期の計画においては不確定な要因が多く、従って曖昧性に対して柔軟なあるいはロバストな階層化構造が不可欠となる。貯水池の運用問題を例題として、従来より検討を加えていた基本構想の下で、3ステップから成る階層化アルゴリズムを開発した。特に最終ステップであるフレキシブル運用のアプローチが、複数貯水池に対しても実運用に有効なことを明確にできた。
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