本研究で得られた成果を要約すると、次の通りである。 (1)北アルプス蝶ヶ岳ヒュッテ(標高2776m)に、最近開発され、風速に対して電子技術で出力を制御するようにした定格出力数百ワット程度の小型風力発電装置を設置し、山岳地域での実用化に有効であることを明らかにするとともに、シミュレーション結果より太陽電池とのハイブリッドシステムの有用性についての見通しを得た。 (2)そこで、学内において、この小型風力発電と太陽電池を用いて、新たに提案したバッテリーへの充電方式(風力・太陽光のそれぞれの発電電力を別々のバッテリーに充電し、負荷には電位の高い方のバッテリーからエネルギーを供給する方式)についての検討を行い、両発電装置の発電量がともに大きい場合には、従来の充電方式(風力・太陽光の発電電力を同一バッテリーに充電する方式)より最大20%良くなるとの結果を得た。 (3)第3の自然エネルギー源として、1kW程度の小規模水力発電の実用化研究を社団法人日本山岳会の協力を得て上高地で実施した。当初は、ゴミ(砂や落ち葉など)のため、数時間しか連続運転ができなかったが、取水口を手作りで改善したところ、大雨のとき以外には数週間保守をしないで常時運転することが可能となった。その結果、1kWの水力発電で得られる発電電力量を太陽光発電で賄うためには、10kWの設備を設置する必要があることも明らかにした。 現在は、上記の成果を基に、デジタル制御技術を用いて、太陽光・風力・小規模水力の組み合わせによるハイブリッドシステムの最適制御化の検討を行っており、負荷条件により必要とするバッテリー容量の最適量を得る予定にしている。
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