研究概要 |
炭化シリコン(SiC)はワイドバンドギャップ半導体(ポリタイプにより2.2〜3.3eVとSiの2〜3倍)であり,p,n型の荷電子制御が容易であり,絶縁破壊電圧がSiより一桁高く,熱伝導度も高いという特長がある。近年,SiCはSiやGaAsなどの既存の半導体では実現できない電力制御用の高パワー素子や高周波素子への応用の観点から注目を集めており,各国で素子応用研究が急激に立ち上げられつつある。しかし,SiCの最大かつ基本的課題は高品質・大面積のSiCウェハーおよびSiC薄膜の開発である。 本研究では,現有のパルスYAGレーザ,イオン源,高周波(または直流)バイアス電源,永久磁石(または電磁石用コイル)を併用したパルスレーザデポジション(PLD)装置によりSiC薄膜作製を行い,FT-IR,AES,XPS,GXRD等を用いて,薄膜特性を調べた。さらにマルチチャンネル分光分斬装置でプラズマの発光分光分析を行い,プロセスプラズマ特性と膜質の相関を定量的に検討した。本年度は,磁界を用いたPLD法により,プラズマプルームが変化すること,それによってドロップレットの減少が可能であること,3インチ以上の大面積基板上に均一な薄膜が作製可能であること等を明らかにした。また,これまで困難であった基板温度800℃における結晶性SiC薄膜の作製に成功した。その他の機能性材料としてCrC,WC,TiC,CN,cBN,SiN、TaN等の高硬度薄膜やSnO_2,WO_3等の薄膜ガスセンサ素子作製も行い,SiC薄膜作製プロセスと比較検討した。以上の研究成果の一部をJJAP、Thin Solid Films等のジャーナルやMat.Res.Soc.2000、Beams 2000、IUMRS2000、IIT2000等の国際学会で発表し、従来得られなかった知見を得たものとして、世界的に高い評価を得た。今後は,プラズマプルーム中の発光種やラジカル分布とSiC薄膜特性の関係を詳細に検討し,最適SiC薄膜堆積条件を解明する予定である。
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