超伝導転移温度が10Kを超え、基板の加熱なしに室温で作製可能なNbTiN超伝導薄膜を超伝導電極としたトンネル素子による超伝導集積回路の実現のため、1)NbTiN超伝導薄膜の作製条件の最適化、2)NbTiNトンネル素子の作製、および超伝導回路に関する研究を行った。 直流マグネトロンスパッタ法により作製されたNbTiN超伝導薄膜の結晶性をX線回折法にて、表面形状を原子間力顕微鏡により確認した。スパッタ電力とNbTiN薄膜の堆積速度をパラメータとして超伝導転移温度が最も高くなる条件を探索した。その結果、NbN薄膜をテンプレートとして堆積したMgO(100)基板上に安定して14.5K以上の超伝導転移温度を持つNbTiN薄膜が作製できることを確認した。 トンネルバリアとなるAlN薄膜に関しては、原子間力顕微鏡による表面形状の観察により表面平坦性が最も良くなる作製条件を探索した。その結果、スパッタ電力50Wで堆積速度を最も遅くした場合に表面平坦性がトンネルバリアとして利用可能な水準になることが明らかとなった。次にNbTiN/AlN/NbTiN構造を作製し、CF_4ガスを用いた反応性イオンエッチングにおけるガス圧とエッチング速度の関係を詳細に調べた。その結果、CF_4ガス圧が高い領域ではAlNがほとんどエッチングされないがNbTiNはエッチングされる領域があり、AlNトンネルバリア層が反応性イオンエッチング時のストッピング層として利用可能であることがわかった。 以上の結果をもとにNbTiN/AlN/NbTiNトンネル素子の作製を試みた結果、ギャップ電圧2.8mVの超伝導ギャップを反映した準粒子のトンネル特性を確認した。今後、AlNトンネルバリア層の作製条件の最適化を行えば良好なトンネル素子が作製可能となると考えられる。 一方、単一磁束量子を用いた論理回路の基本回路であるNANDゲートとNORゲートの比較を行い、NORゲートの方が動作マージンを大きく取れることを見出した。さらに、回路構成を最適化することにより実際の集積回路に利用可能な動作マージンをもつNANDゲートとNORゲートを設計した。実際にNb/AlO_x/Nbの標準プロセスを用いてゲートを作製し、比較的広い動作マージンを有することを確認した。
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