研究概要 |
本研究は、シリコン基板上にエピタキシャル結晶形成可能な絶縁体及び半導体超格子を用いた発光・受光デバイスを実現するための基礎研究として、これまで報告者らにより実現されたシリコン基板上へのナノクリスタル酸化亜鉛(ZnO)/弗化カルシウム(CaF_2)ヘテロ構造形成技術を確立し、さらに、その新しい材料系の光物性を明らかにするとともに、発光素子応用への基礎となる実験的・理論的研究を目的とする。この目的を達成するため、以下の成果を得た。 酸化亜鉛(ZnO)は約3.3eVのワイドバンドギャップを持つ直接遷移型半導体であることから、短波長、高効率の紫外域発光材料として期待されている。これまでに、シリコン基板上にエピタキシャル成長可能な弗化物系絶縁物弗化カルシウム(CaF_2)中にZnOのナノクリスタルの埋め込み構造が形成可能であることを初めて見出し、さらに、CaF_2をエネルギー障壁とするトンネル電流注入構造による発光を確認した。しかし価電子帯側の大きなエネルギー障壁が存在するため、ホールの注入が困難であり、わずかな発光しか得られない問題があった。そこで、本研究では以下の2つの観点で研究を行った。すなわち、1)ZnO結晶品質の向上、および2)ホール注入層に用いるためのp型ZnOの実現を目指した不純物ドーピングによる伝導性制御、の2点である。まず、ZnO結晶品質の向上を目的として、酸素欠損欠陥を低減させるため酸素雰囲気中での高温(900〜1100℃)アニールを試みたところ,フォトルミネッセンス測定において、バンド端エキシトンからの発光ピークが100倍以上向上し、良好な紫外線発光を示す結晶が得られた。また、ZnOのp型化に関しては,p型化を困難にしているアクセプタの低活性化率、低固溶限を克服するため、第一原理計算を用いた理論予測を参考に、Ga(ドナー)とN(アクセプタ)の同時ドーピングを試みた。ターゲットとして酸化ガリウム+酸化亜鉛、スパッタガスとして2酸化窒素を用いて成長温度、スパッタ電力等の依存性を調べた結果、10^<20>〜10^<21>cm^<-3>の高濃度のNアクセプタがドーピングされていることが確認された。
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