n型InSbMISFETの微細化に適したソース・ドレイン構造の製作方法を研究した。硫黄の表面吸着ならびにスズ薄膜の真空蒸着によりドナーをプレデポジション後、光照射アニールにより活性化して接合を形成した。スズを用いた場合、整流比10^4のpnダイオードを形成できた。このダイオード形成法を用いたInSbMISFETの自己整合プロセスを提案し、実際にトランジスタを製作した。 アニールを施さない試料はトランジスタ特性を全く示さなかったが、光照射アニールを施すことにより、nチャネル動作特性を示すようになった。ただし、移動度が数cm^2/Vsと極めて低く、ドレイン側のリーク電流が著しく多い特性を示した。アニール温度を300℃4分間から200℃10分間に低温化し、さらにゲート絶縁膜を100nmから70nmに薄膜化する変更を加えたところ、チャネルの移動度は最大1500cm^2/Vsまで向上した。同時にドレイン側のリーク電流も低減された。これはアニール温度が高い場合には、ドナー不純物用に堆積したスズ、もしくは電極用に堆積したアルミニウムがInSbと合金化してアロイスパイクを形成するためと思われる。また、リングゲート型トランジスタと通常のマスクパターンのトランジスタのしきい値電圧を比べると、リングゲート型トランジスタがエンハンスメント型であったのに対し、通常パターンのトランジスタはディプレッション型になっていた。これは、光照射アニール時に、ゲート電極によって下地InSb界面が保護された証拠といえる。以上の結果より、光照射アニールはゲート電極がマスクと使えるので、通常の電気炉でアニールするよりも熱損傷が少ないことを確かめられた。
|