研究概要 |
平成12年度はGaAs基板上に作製したFeSe薄膜に関する(1)磁気輸送特性の解析,及び(2)構造解析を行った. FeSe薄膜の作製方法は既に最適化されており,GaAs基板上に高周波マグネトロンスパッタ装置にて作製したFe薄膜(膜厚50〜600nm)を,分子線エピタキシー装置内にてセレン化を行うことにより,FeSe薄膜を得た,ここで得られたFeSe薄膜のFe/Se組成比は2:3であり,バルク安定構造として知られているFe_3Se_4やFe_7Se_8とは異なる構造を有することが既に明らかとなっている. (1)磁気輸送特性 FeSe薄膜の抵抗率測定,ホール効果測定より,抵抗率ρ=1.1×10^<-4>Ωm,キャリア(電子)密度n=2.1×10^<23>m^<-3>であることがわかった.ホール電圧の弱磁界印加領域では強磁性体特有の現象,異常ホール効果と類似の特性を示したが,磁気抵抗効果(MR効果)測定における抵抗変化は微小であった.結晶構造に基づく異方性との関連を含め磁気輸送特性の解析は引き続き研究を行い,詳細を明らかにしたい. (2)構造解析 平成11年度の研究成果として逆格子空間マッピング測定を行った結果,バルクFeSe薄膜に多い六方晶構造ではなく,得られた薄膜は立方晶の結晶構造を有することが示唆された.この立方晶構造はGaAs/ZnSe/Feなどとの積層構造(ヘテロ構造)を設計する際に大きな利点となるため,さらに詳細に測定評価を行った.通常のω/θ逆格子面でのスキャンでは広範囲な領域をカバーすることが不可能なため,ω/θ-ψ面での逆格子空間マッピング測定を行った.その結果,GaAs(001)基板からの(002),(004),(113)の各回折ピークに対応してFeSeからの回折ピークが観測された.FeSeはその回折パターンから格子定数0.551nmの立方晶であることが確認された.
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