研究概要 |
平成11年度に研究した項目はSAW基板となるp型ダイヤモンドの特性評価と、その上に成長させるAlN薄膜の堆積方法である。ダイヤモンドの特性として、高濃度に不純物を添加した状態でのダイヤモンドの伝導機構の解明を行った。ダイヤモンドは5.5eVという大きな禁止帯幅を持つ半導体のため、シリコンやGaAsとは異なった電気伝導機構を持つと予想される。不純物バンド伝導を示すダイヤモンドとバンド伝導を示すダイヤモンドの接合構造を用いて、この伝導機構の違いを端的に示す実験を提案し、ダイヤモンドには外部から注入されたキャリアのみ感じるトラップ準位があることを見いだし、その準位を介した伝導が存在することを証明した(業績の1)。 AlN薄膜の堆積方法として、現在2通りの方法を検討している。標準的なMOCVDを用いる方法と、ECR共鳴点成膜法である。MOCVDでは成長温度の違いにより成長する結晶に配向性が現れること、また2段階成長によりこの配向牲を制御できることを明らかにした。ECR共鳴点成膜では600度C以下の温度でAlNを成長させることが可能な、低温成長である利点を生かして、金属アルミニューム上にAlNをへテロエピタキシャル成長させることに成功した。以上の成果についてはケミカルビームCVD国際会議(筑波)で発表を行った(業績2,3)。この方法により金属アルミニューム・六方晶AlN積層構造SAWフィルタを試作し、Q値3,000,000を得た。この高いQ値はラム波の励起によると理解されることを99年秋の応用物理学会にて報告を行った。
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