研究概要 |
平成12年度に研究した項目はSAW基板となるp型ダイヤモンドの評価と、その上に成長させるAlN薄膜の堆積方法である。ダイヤモンドの評価として、高濃度に不純物を添加した状態でのダイヤモンドの伝導機構を解明した。ダイヤモンドは5.5eVという大きな禁止帯幅を持つ半導体のため、シリコンやGaAsとは異なった電気伝導機構を持つことを解明した。不純物の増加と共に浅い不純物準位が発生し、キャリアはこの浅い準位を伝導する。このことを、不純物バンド伝導を示すダイヤモンドとバンド伝導を示すダイヤモンドの接合構造を用いて、この伝導機構の違いを端的に示す実験により、証明した(業績の1、5、6)。 AlN薄膜の堆積方法として、2通りの方法を比較検討した。標準的なMOCVDを用いる方法と、ECR共鳴点成膜法である。MOCVDでは1150℃で結晶性の良いAlNが出きることを見出した。ECR共鳴点成膜では600℃以下の温度でAlNが成長することを見出した。低温成長である利点を生かして、金属アルミニューム上にAlNをヘテロエピタキシャル成長させることに成功した。この方法により金属アルミニューム・六方晶AlN積層構造SAWフィルタを試作し、Q値3,000,000を得た。この高いQ値はラム波の励起によると理解されることをナイトライド国際集会(IWN2000)で報告を行った(業績の2、3)。 以上の纏めとしてサファイアR面とC面上にL/S1.3ミクロンでSAWフィルタを試作し、フィルタ特性として1.1GHz、弾性波音速5620m/sを得た。この値はシミュレーション結果と1.8%の誤差で一致しており、理論的にも技術的にも当初の目標を達成できた(業績の4)。また安定なダイヤモンド上のAlN成長についても多くの知見を得ることができた。
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