今日、エレクトロニクスでは性能向上にも限界が見え、従来の主役である電子に加えて光がそれぞれの特徴を生かして役割分担する新しい概念のデバイス・光電子集積回路の開発が待たれている。しかし、これを実現する上で各構成材料であるシリコンとガリウム砒素との異種接合間には約4%の格子不整合があるため結晶性が著しく劣化してしまい、実現への大きな障壁となっている。本研究では、以上の問題点を改善する為の基礎的検討として、シリコン基板と格子整合可能な新材料窒化ガリウムインジウム砒素混晶に着目し、高品質なIII-V族混晶を作製できる成長技術を確立することにある。前年度の研究結果から、ECRの窒素プラズマにより発生した窒素分子イオンによるダメージが混晶薄膜の結晶性に大きな悪影響を及ぼすことが判明した。この為、平成11年度は新材料の成長条件の検討を実施する前にまず、急務であるダメージを取り除くための検討に費やした。わかったことは、ダメージはプラズマに供給するマイクロ波のパワーではなく、窒素分子イオンのプラズマ発光強度をスリー・スタプ・チューナーでその場制御すれば、十分に抑えることができることを明らかになった。また、ヘテロ接合部の結晶性に基本的な影響をあたえるSi基板の酸化膜の除去法として採用した高温熱処理(1250℃)が、逆にSi基板表面の形状を大幅に悪化させていることが明らかとなった。原子間力顕微鏡による観察から、1070℃以上でSi基板上に無数の粒状が発生することがわかり、これは年表面層が蒸発したためか、炭化したことが原因として考えられる。現在、この原因、及び生成過程を調査し、今後はこの粒を利用し、新しい量子ドットの形成が可能であるかなども新材料窒化ガリウムインジウム砒素混晶の結晶成長の検討と共に、併せて調べていく予定である。
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