研究概要 |
磁性体の中でも高周波導波路媒質として用いられるイットリウム・鉄・ガーネット(YIG)におけるマイクロ波の伝搬について,特に非線形特性解析と時間領域解析という点に重点を置いて特性を明らかにした. 解析法として有限差分時間領域法(FDTD法)を用いている.従来この手法を分散性のある磁気異方性媒質に適用した例はあまり多くはなく,非線形特性を含めたものは全く報告がなかった.本研究では電子スピンの歳差運動方程式を差分化して,それをFDTD法に組み入れ,研究代表者が提案したサンプル点の配置法を適用することによって,電力に対する非線形性を含めた伝搬特性を求めた. まず無限媒質における電磁波モードの伝搬について,一次元モデルを使って解析した.マイクロ波を搬送波とする包絡線パルスは,入力電力の増大によりパルス幅が狭くなり,振幅最大値が大きくなる非線形性を確認できたうえ,ある入力電力においてパルスが変形せずに伝搬するという結果を得た.すなわちこの電磁波モードにおいてもソリトンが形成できることがわかった.また入力パルス波形としてソリトン解を用いることによって,パルス変形の特徴をとらえることが容易になった.さらに包絡線のみに注目したSchrodinger方程式を数値的に解いた結果と比較・検討している. 次に静磁体積後退波(MSBVW)モードの非線形特性を解析した.まず先に述べた解析法が2次元導波路モデルに対しても有効であることを示し,次に導波路中の静磁波-電磁波変換部付近の領域とその間の伝搬領域とで印加する直流磁界の強さを変えた場合,すなわち不均一磁界を印加した場合について,包絡線パルスの伝搬における変形を考察した.また同じくMSFVWモードにおいてパラメトリック増幅現象をFDTD法によりシミュレーションできることを確かめた.
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