研究概要 |
磁性体の中でも高周波導波路媒質として用いられるフェライトであるイットリウム・鉄・ガーネット(YIG)におけるマイクロ波の伝搬について,特に非線形特性解析と時間領域解析という点に重点を置いて特性を明らかにした. まず昨年度に引き続き,静磁後退体積波モードを使ったパラメトリック増幅の時間領域解析を行った.研究代表者が先に提案した手法を用いて解析した結果,励振および受信アンテナの位置によって利得特性を改善できることを明らかにし,さらに磁気損失による波動の減衰に対する補償をパラメトリック増幅によって行えることを示した. 次に新しい動作原理に基づく静磁波ミキサの解析を行っている.静磁波を用いた信号のミキシングはフェライトの非線形現象の一つであり,線形動作を前提とする従来の手法では解析困難であった.本研究では数値解析を行うとともに,実際にデバイスを試作し,その特性について明らかにした. また,静磁波の励振位置による伝搬特性の変化について解析を行った.実際のデバイスにおいては電磁波モードから静磁波モードへの変換が必要となるが,そのトランスデューサを置く位置によって静磁後退体積波の各モードの励振比率が変化し,全体として伝送特性が変わることを明らかにした.具体的にはYIGスラブの端面に置いて励振する方が上面に置く場合に比べて高次モードが励振されにくく,最低次モードの励振効率が向上することを示した. さらには,同手法を用いて静磁表面波の時間領域解析を行った.これは初めての試みであり,静磁表面波に対しても非線形因子を省略することなく,また近似的な手法を用いることなく有限差分時間領域法により解析できることを確認した.
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