研究概要 |
本研究を、立ち上げるのに、まず(110)面上の半導体レーザ製作に必要なプロセス技術の確立を目指した。この面上の[001]方位のキャビティを持つレーザを作製するキーとなる技術は、[001]面の共振器用反射鏡を形成することであるが、この面は劈開面でないため、エッチングにより、垂直な反射面を形成する必要がある。従来より多用されているウエットエッチ法では、垂直なエッチ面の形成は困難なので、ドライエッチ法を採用した。光通信用半導体材料であるInP基板上のGaInAs(P)は、GaAs半導体に比べて、ドライエッチが難しく、塩素系ガスを用いると、低融点の反応生成物ができるため、反応生成物の昇華温度が高い臭素系ガスを用いた。この臭素系ガス(BBr3)を用いた反応性イオンエッチを行うのに適当なマスク材料としてSiO2,SiO,Si,Ti,TiO2を検討し、SiO2が最も適していることを確認した。エッチング速度は、InP半導体加工において最も重要なパラメータであるので、どの要素が効くかを調べた結果、基板温度が重要であり、200Cまで、加熱することにより、0.4um/minのエッチ速度を得た。 この技術を用いて、(110)面GaInAs(P)量子井戸構造ウエハで[001]方位のキャビティを持つ全面電極構造レーザを作製した。発振閾値電流密度は、0.6KA/cm2であり、この値は同じウエハを用いて作った[110]方位のレーザの発振閾値電流密度の約半分であった。この結果は、[001]方位のキャビティを持つ(110)面量子井戸半導体レーザの期待されている利点を示すものである。
|