提案したビジョンチップは、受光部、AC成分抽出回路、平均値抽出回路、感度補正回路で構成されている。ここでは強い背景光に埋もれた微弱なAC成分検出のため、受光部として高いゲインを持つダーリントン接続フォトトランジスタ(PTr)を用いた。この場合ゲインのばらつきが無視できなくなるため、ばらつきを抑える感度補正回路を導入した。これは、平均値抽出回路からの出力(注目画素との差)の絶対値に応じて、注目画素の値を周辺8画素平均値に置き換えるか否かを選択する機能を有するものである。 今年度は非同期型の基本である非蓄積動作型ビジョンチップ及びその応用に関する検討を行った。まず、非蓄積動作に必要なゲインを有するフォトトランジスタ特性の評価を実施した。また、非蓄積動作を応用して、変調照明光(AC)を用いて反射光のAC成分を抽出することで背景光(DC)強度に依存しない撮像が可能なビジョンチップの提案を行い、基本動作をシミュレーションにて確認した。 本提案方式の回路設計を行い、その基本動作特性、特に感度補正回路の有効性の確認をシミュレーション(HSPICE)を用いて行った。シミュレーションに先立ち、必要なパラメータを得るためにCMOS1.2umプロセスを用いて受光素子を試作し、評価した。PTrはP基板・N-well・P拡散層の縦型寄生トランジスタ構造とし、β≒20、カットオフ周波数80kHzであった。感度補正回路はシミュレーションの結果PTrゲインばらつき±50%以内で精度5%以下で補正ができることを確認した。
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