(1)PDPマイクロ放電ヘレーザートムソン散乱計測法(LTS)を適用するに当たっては、信号が微弱であることと、器壁から散乱体積までの距離も0.1mm程度しかとれないため強い器壁散乱光が存在することによる信号検出の困難性が懸念された。本研究では、これらの問題についての検討結果に基づき、マイクロ放電用LTS計測システムを構築した。このシステムでは、3枚の回折格子を用いた分光器を製作し、迷光リジェクション10^8の性能を実現した。この分光器を含めて光学系を最適化することにより、マイクロ放電へのLTS法の適用を初めて可能とした。 (2)上記で確立したLTS計測システムを用いて、PDP放電を模擬したマイクロ放電を対象とした計測を行った。その結果、電極基板表面から0.1mm離れた位置において初めて明確なLTS信号を検出することに成功した。 (3)電極表面より0.1mm離れた面内において、マイクロ放電内の電子密度と電子温度の空間分布の経時変化を測定した。測定した領域において、電子密度の絶対値は(0.2〜3)×10^<19>m^<-3>、電子温度は1〜3eVの範囲であることを明らかにした。また、電子密度のピークは常に電極ギャップ上にあるが、電子温度のピークは時間とともに電極ギャップから離れる方向に移動していることを示した。 (4)電子密度と電子温度の空間分布と高エネルギー電子に関わる発光の空間分布をもとに、放電過程に関する検討を行った。その結果、誘電体表面に電荷が蓄積することによる放電フロント部の移動がLTS計測により電子温度分布の変化として初めて捉えられた。
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