研究概要 |
「電磁波を用いたセンシング・イメージングシステムの高性能化」では,いかにして解像度および耐雑音性を向上させるかが大きな研究課題となっている。この問題を解決するには,レーダ信号に含まれている物体の情報を正確に,且つ効率よく抽出するための信号処理技術の確立が鍵となる。本研究では,レーダ信号からターゲット情報を効率よく抽出するためのウェーブレット変換を用いた新しい信号解析法「適応型時間-周波数解析法」の提案及びその有効性の検討を行うことを目的としている.この解析法の特長は,解像度が信号に応じて最良の値へと自動的に変化することである.基底関数の時間と周波数の中心,及びその幅が解析対象の信号に適応するように調整されるため,短時間フーリエ変換や通常のウェーブレット変換では失われていた情報,すなわち低周波域での時間解像度や高周波域での周波数解像度が良好に表現されることが期待できるわけである.今年度は,昨年度に得られた知見を基に,計算機シミュレーションをい,この適応型時間-周波数解析法の有効性について検討を行った.その結果,以下の結論が得られた. 1.短時間フーリエ変換に比べて,本手法は非常に有効な時間-周波数解析法である. 2.基底関数のパラメータの選び方によって,時間分解能と周波数分解能を,ある程度制御可能である. 3.基底関数展開における分解レベルを適当に選ぶことにより,ノイズの影響を受けにくいスペクトログラムを作ることができる. 4.ただし,信号に分散がある場合はスペクトログラム上には曲線となって表示されるが,今回提案した手法では,明瞭な曲線は得られない場合があった. 以上のように,今回提案した「適用時間-周波数解析法」は,従来の時間周波数解析法に比べて大変有効な手法であることが示された. 今後の課題としては, 4.に記したように,分散の表示能力を改良することがあげられる.
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